髪を洗ったり整えたりした際、抜け落ちた毛の根元に透明〜白色の柔らかい組織が付着していることがあります。これは「毛根鞘」と呼ばれる部分で、髪の毛を頭皮に保持するための構造の一つです。
自然なヘアサイクルのなかで抜けた毛に毛根鞘が残ることはよくあり、通常は抜け毛に毛根鞘がついているからといって過度に心配する必要はありません。ただし、毛を引っ張る癖がある場合や無理な抜毛を繰り返すと、頭皮に負担がかかる可能性があるため注意が求められます。
本記事では「毛根鞘とは何か」をわかりやすく解説し、役割や皮脂との見分け方、毛根鞘が付着する抜け毛と付着しない抜け毛の違いついても整理します。
また、抜毛行動が習慣化するケースや、気になる抜け毛をチェックする際のポイントについてもまとめています。毛根の構造を正しく理解したい方は、ぜひ参考にしてください。
毛根鞘(もうこんしょう)とは?

髪の毛が抜けた際、根元に白っぽい塊が付いているのを見たことはありませんか。髪の根元を包む組織を毛根鞘と呼びます。
毛根鞘は、毛根を取り囲むように存在する組織で、髪を頭皮につなぎとめる役割を担っています。半透明でゼリー状の見た目をしており、触るとぷるぷるとした弾力があるのが特徴です。
自然に抜け落ちた髪には毛根鞘が付着していることがあります。抜け毛に付いている毛根鞘は、健康的な髪の成長サイクルが正常に機能している証拠とも言えるのです。
内毛根鞘と外毛根鞘の2層構造で髪を守っている
毛根鞘は、内毛根鞘と外毛根鞘という2つの層で構成されています。
- 内毛根鞘
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髪の表面にあるキューティクルと噛み合うように付着しており、ウロコ状に重なったキューティクルを支える針金のような役割を果たす層です。髪の成長が活発な成長期には、内毛根鞘がキューティクルと強く結合して髪を固定します。
- 外毛根鞘
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外毛根鞘は内毛根鞘の外側を覆い、頭皮と髪をつなぎ止める組織として機能しています。皮膚と髪の毛をつなぐ接着剤のような働きをしており、髪の成長に必要な栄養素を毛根の細胞へ供給する役割も担います。
2層構造によって、髪は頭皮にしっかりと固定されながら、外部の刺激から保護されて健全に成長できる環境が維持されるのです。
毛根鞘と皮脂の違いは触感で見分けられる
抜け毛の根元についた白い塊を見ると、根元から抜けてしまったのではないかと不安になる方も多いでしょう。白い塊は多くの場合毛根鞘または皮脂であるケースが大半を占めています。
毛根鞘と皮脂は見た目が似ているため混同されがちですが、実際に触ってみると簡単に見分けることができます。抜け毛を確認する際は、根元の塊を指で軽く触れてみましょう。弾力があれば毛根鞘、ベタつきがあれば皮脂と判断できます。
| 特徴 | 毛根鞘 | 皮脂 |
|---|---|---|
| 色 | 半透明 | 白色~黄色 |
| 質感 | ゼリー状、プルプルとした弾力 | ベタベタとしていて油性 |
| 触感 | 軽い粘り気、不快感なし | 強いベタつき、洗い流す必要あり |
| 付着位置 | 毛根部 | 毛根部から根元にかけて |
毛根鞘を抜くとどうなる?髪は再び生えてくる
毛根鞘がついた状態で髪が抜けると、もう二度と生えないのでは?と心配になります。
しかし結論から言えば、毛根鞘が抜けても髪は再び生えてきます。髪を作り出す毛乳頭と毛母細胞は毛穴の奥深くに残っているためです。
毛乳頭は血管から栄養を受け取り、毛母細胞に届ける役割を担っています。毛母細胞は活発に分裂を繰り返して新しい髪を生成する細胞です。通常の抜毛では、毛穴の奥の組織まで完全に取り除くことはできません。
つまり、抜け毛に白い塊がついていても「毛根ごと抜けた」わけではなく、髪を生み出す本体は頭皮内に健在です。
毛乳頭と毛母細胞が残っていれば髪は再生する
髪の再生を支えているのは、毛穴の奥深くに存在する毛乳頭と毛母細胞という2つの組織です。
毛乳頭は毛球の底部に位置し、周囲の毛細血管から栄養や酸素を受け取る役割を担っています。毛乳頭から髪の成長を促す成長因子が分泌され、毛母細胞に栄養を供給します。
毛母細胞は毛乳頭の周囲に存在し、栄養を受け取りながら1日に数十回も分裂を繰り返します。細胞分裂によって新しい細胞が次々と生まれ、ケラチン化して硬くなって髪が形成されるのです。
毛根鞘は髪を頭皮に固定する組織ですが、髪を作り出す本体ではありません。通常の抜毛では毛乳頭や毛母細胞は毛穴の奥に残ったままなので、組織が健在である限り、新しい髪と毛根鞘が再び形成され、髪は正常に生えてきます。
無理に抜くと毛穴を傷つけるリスクがある
髪を無理に引き抜く行為は、毛穴や周辺組織に深刻なダメージを与える可能性があります。
強制的に髪を抜くと、毛穴周辺の皮膚が傷つき、赤みや腫れなどの炎症を引き起こしてしまうことも。傷ついた毛穴から細菌が侵入すると、毛嚢炎という炎症に発展し、膿が溜まったり痛みを伴ったりする状態になってしまいます。
さらに出血を伴う場合は、毛穴の内部や毛根を包む組織まで損傷している恐れがあります。傷口から雑菌が入ると感染症のリスクが高まり、放置すれば瘢痕化して毛穴が変形する可能性もあります。
注意すべきなのは、繰り返し同じ場所の髪を抜き続けることです。何度も刺激を受けた毛乳頭が損傷すると、その毛穴から髪が生えにくくなり、最悪の場合は永久的な脱毛につながることもあります。
毛根鞘がついていても髪は再生しますが、抜く行為自体は避けるべきです。
抜け毛に毛根鞘がついていても心配はいらない

毛根鞘が付着した抜け毛は、健康な髪のサイクルが正常に機能している証拠です。髪には成長期・退行期・休止期という3つの周期があり、2〜6年かけて成長した髪は退行期を経て休止期に入ります。
休止期に自然と抜け落ちる髪には、毛根鞘が付着しているのが正常な状態です。健康な成人であれば心配する必要はありません。
毛根鞘がついているということは、髪が十分に成長期を過ごし、寿命を全うした証とも言えます。過度に心配せず、抜け毛の本数や髪の太さなど他の要素にも注目して、髪の健康状態を総合的に判断しましょう。
自然な抜け毛に毛根鞘が付着するのは正常なこと
健康的な髪は、成長期・退行期・休止期という3つのヘアサイクルを繰り返しています。
健康な髪のヘアサイクル
| サイクル | 期間 | 特徴 |
|---|---|---|
| 成長期 | 2~6年 | 髪が太く長く成長。毛根鞘で頭皮に固定 |
| 退行期 | 2~3週間 | 毛母細胞の活動が弱まり成長停止 |
| 休止期 | 2~3ヶ月 | 毛根が浅い位置に移動し、自然に抜け落ちる |
成長期の髪は毛根鞘によってしっかりと頭皮に固定されています。退行期に入ると約2〜3週間かけて髪の成長が止まります。そして休止期を迎えた髪は、2〜3ヶ月後に自然と抜け落ちます。
この時、役目を終えた毛根鞘も一緒に抜けるのが正常な状態なのです。
健康な成人の場合、全体の14%の髪が休止期にあり、1日に50〜100本程度が自然に抜け落ちます。ブラッシングやシャンプーの際に抜ける髪は、ヘアサイクルを全うした髪であり、毛根鞘が付着しているのはむしろ健康の証です。
新しい髪は毛穴の奥で既に準備されているため、過度な心配は不要と言えます。
毛根鞘に血がついている場合は頭皮ケアを見直す
抜け毛の毛根鞘に血液が付着している場合は、頭皮や毛根に何らかの問題が生じているサインです。
- 強く髪を引っ張って抜いたことによる毛穴周辺の血管損傷
- 頭皮の炎症
- 誤ったブラッシングによる刺激
- 寝具との過度な摩擦
血が付いた状態を放置すると、傷口から細菌が侵入し、毛嚢炎などの炎症を引き起こすリスクがあります。頭皮ケアの見直しが必要です。
- シャンプー:指の腹を使って優しく洗い、爪を立てない
- ブラッシング:毛先から徐々にとかし、無理に引っ張らない
- 頭皮マッサージ:強く押しすぎず適度な力加減を心がける
それでも出血が続く場合や、痛み・腫れを伴う場合は、早めに皮膚科や専門クリニックへ相談することをおすすめします。
毛根鞘がついていない抜け毛が多いときは薄毛のサインかも
抜け毛に毛根鞘が付着していない場合は、注意が必要です。健康な髪が自然に抜ける際には毛根鞘が付いているのが通常ですが、毛根鞘がない抜け毛が多いということは、髪が成長期を十分に過ごせずに抜けている可能性があります。
本来2〜6年続くはずの成長期が短縮され、髪が太く長く育つ前に退行期へ移行してしまっている状態です。このような抜け毛が目立つ場合、AGAなどの脱毛症が進行している初期サインかもしれません。
特に抜け毛が細く短い、毛根が小さくやせ細っている、抜け毛の本数が明らかに増えているといった特徴が見られたら要注意です。早期に適切な対策を始めれば、薄毛の進行を抑えられる可能性が高まります。
髪が十分に成長せず抜けている可能性がある
毛根鞘がない抜け毛が多い場合、ヘアサイクルに異常が起きている可能性が高いと言えます。
正常なヘアサイクルなら2〜6年あるはずの成長期が、何らかの原因で数ヶ月〜1年程度に短くなってしまうことがあります。成長期が短くなると、髪は十分に太く長く育つ前に退行期を迎え、未成熟な状態で抜け落ちてしまうのです。
このような症状は、AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性型脱毛症)の初期段階でよく見られます。男性ホルモンの影響で毛母細胞の活動が抑制され、成長期が短縮されることが主な原因です。
参考:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版
- 髪が細く短い
- 毛根が小さくやせ細っている
- 全体的に白っぽく見える
- 毛根鞘がない
放置すると薄毛が目立つようになるため、早めの対策が重要となります。
抜け毛の量や状態が気になるときは専門機関への相談も選択肢
毛根鞘がない抜け毛が目立つ、抜け毛の本数が明らかに増えたと感じる場合は、専門機関への相談を検討しましょう。
相談先として皮膚科、AGAクリニック、毛髪専門外来などがあります。皮膚科では頭皮の炎症や皮膚疾患の有無を診断し、AGAクリニックでは男性型・女性型脱毛症に特化した治療を受けられます。
専門機関では、マイクロスコープによる頭皮と毛根の詳細な観察、毛髪ミネラル検査によるホルモンバランスのチェック、血液検査による栄養状態の確認などが行われます。検査によって、抜け毛の原因を科学的に特定できます。
早期に相談すれば治療の選択肢が広がり、薄毛の進行を遅らせられる可能性があります。症状が進行してからでは治療効果が限定的になるため、気になる兆候があれば早めの受診をおすすめします。

毛根鞘を繰り返し抜いてしまう場合は抜毛症の可能性も
髪の毛や体毛を自分で引き抜く行為を止められない状態が続く場合、抜毛症(トリコチロマニア)の可能性があります。
抜毛症は、自分の意思で抜毛行為を止められない精神疾患の一つです。単なる癖との違いは、抜毛を減らそうと繰り返し試みてもできず、行為によって日常生活に支障をきたす点にあります。
精神的・心理的な背景が深く関係しており、毛を抜く前には緊張感や不安が高まっている状態です。抜毛によって不安感が軽減され、一時的な満足感を覚えることがあります。
思春期前後に発症する方が多いとされる疾患です。自分や家族に気になる抜毛行為がある場合は、精神疾患の可能性を理解し、適切な医療機関への相談を検討しましょう。
抜毛症(トリコチロマニア)は心因的な要因が関係する
抜毛症の発症には、ストレス、不安、強迫性などの心理的要因が深く関わっています。
学校や職場での人間関係、受験のプレッシャー、家庭環境など、さまざまなストレスが引き金となり、緊張感や不安を感じる状況で抜毛行為に至ります。抜毛する直前には緊張感が高まっており、毛を抜くと感情が和らぎ、一時的な安心感や満足感を得られるため、ストレス解消の手段として無意識に繰り返してしまう悪循環に陥ります。
思春期の直前または直後に発症するのが典型的で、人口の1~2%が抱えているとされます。子供の場合は無意識に抜いている場合が多く、大人では意識的に抜毛する傾向が見られます。
成人患者の約80~90%が女性で、症状の重症度は変動し、生涯続くケースもあります。
症状が続く場合は心療内科や精神科への相談を検討する
抜毛症の治療には、心理的要因に対する専門的な対応が必要です。
心療内科や精神科では、認知行動療法と薬物療法を組み合わせた治療が行われます。認知行動療法では、抜毛行為の引き金となる状況を特定し、抜毛衝動が起きた時に別の行動(手を握る、ストレスボールを握るなど)に置き換える習慣逆転法が有効とされています。
症状に応じて薬物療法が検討されることもあります。
受診のタイミングとしては、抜毛をやめようとしても止められない、日常生活に支障が出ている、脱毛部分を隠すために外出を避けるなどの状態が続く場合は早めの相談が推奨されます。
