低用量ピル(OC)ORAL CONTRACEPTIVE
目次
このページについて
このページは低用量ピル(OC)の効果や使用用途をご案内するページです。
低用量ピル(OC)とは
低用量ピル(OC)は、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という二つの女性ホルモンを合成し、避妊のために開発された薬剤です。(以下、OCと表記)その成分は、卵巣で作られるホルモンと同じ構造をしていることから継続服用を続けると、脳はすでに十分な量のホルモンが分泌されていると判断し、下垂体からのホルモン分泌を抑え、排卵をストップします。
また、子宮内膜の増殖を防ぎ、受精卵を着床しにくくする作用や、子宮の入り口(頸管:けいかん)の粘液を濃くして、精子の侵入を防ぐ作用もあることから、高い避妊効果が期待できます。従来からあった中・高用量のピルは、副作用などの問題から、使用をためらわれることもありましたが、OCは、配合するホルモン量を低く抑えているため、高い避妊効果を維持しつつ、副作用は大幅に軽減され、安心して使用することができるようになりました。
OCの効果(メリット)
低用量ピルは避妊はもとより生理痛の軽減や、PMS(月経前症候群)、大人ニキビの改善など多くのメリットがある薬です。月経周期を整え、イベントなど大事な時のために月経周期の調整もできます。
「避妊のための薬」というイメージが強い低用量ピルですが、避妊以外にも女性の健康に多くのメリットがあることから、最近では、生理に関するトラブルの改善や体調管理のために服用する女性が増えています。
こんなお悩みの方に選ばれています
- 今は避妊が必要だが、将来的に子供が欲しい
- 生理時の経血量が多い
- 男性まかせでなく、自分で避妊対策をしたい
- 生理が不順
- 生理前の腹痛、むくみ、イライラ感、精神的な落ち込み
- 強い生理痛
- 生理前のニキビ(Uゾーン)
避妊効果
OCを正しく服用すれば、ほぼ100%に近い避妊効果が期待できます。この数字は、コンドームを使用した場合の妊娠率が約2%~約20%といわれているのに対しOCの妊娠率はわずか約0.3%と、外科的な避妊手術を行うのと同等の効果が得られることを表しています。また、男性任せだった避妊を自分から行うことができるのも大きなメリットです。
※飲み忘れには注意が必要です。妊娠の可能性が上がってしまう可能性があります。
作用
排卵の抑制
OCを服用すると、排卵が抑制されます。
精子の子宮内進入の抑止
黄体ホルモン(プロゲスチン)の働きで、子宮頸管粘液の性状が変化して(粘性を高める)、精子を子宮内に入りにくくします。
受精卵の着床抑止
OCを服用すると子宮内膜が薄くなり、たとえ排卵が起きて受精した場合でも、受精卵が着床しにくい状態になり、妊娠を防ぎます。
生理痛・過多月経の改善効果
生理痛の多くは、増殖した子宮内膜から「プロスタグランジン」という痛み物質が大量に放出され、子宮を収縮させることで起こります。
作用
OCには子宮内膜の増殖を抑える作用があるため、プロスタグランジンの産生が減り、子宮の収縮運動を抑えることで生理痛が軽減します。また、経血量も減少することから、過多月経による貧血症状の改善も期待できます。
※月経困難症がある場合には保険適用のピル(LEP)の処方が可能です。
生理不順の改善
生理不順とは、「続発性無月経(初経後、生理が3か月以上ない)」「ダラダラ続く」など月経周期が不規則になる状態で、体内のホルモンバランスが崩れることで起こると考えられています。
月経前症候群(PMS)の緩和
月経前症候群(PMS)は、生理の3~10日前くらいから始まる心身のさまざまな不快な症状(吐き気やめまい、むくみ、頭痛、不眠、イライラ、うつなど)が特徴で、排卵後から月経までの大きなホルモン変動や、それに伴う脳内物質の変化で生じるとされています。
作用
OCで排卵を抑制すると、ホルモンの変動が起こりにくくなるため、不快な症状が軽減します。
大人ニキビ・多毛改善
頬やあご、口周りなどの「Uゾーン」にできる大人ニキビは、卵巣や副腎で作られる男性ホルモン(アンドロゲン)やプロゲステロンの過剰が原因で起こると考えられています。
作用
OCに含まれる卵胞ホルモン(エストロゲン)にはアンドロゲンを抑える作用があることから、ニキビを改善することが可能です。(特に治りにくい場合は、アンドロゲンの抑制作用のある「スピロノラクトン」という利尿系降圧剤を併用することもあります。)
なお、アンドロゲンは多毛の原因にもなることから、OCを長期間服用していると徐々に体毛が薄くなり、多毛症の改善にも効果が期待できます。
月経移動(生理日のコントロール)
ピルの応用的な使用法として、「月経移動」があります。受験やスポーツの試合、旅行などの大切なイベントが生理と重なってしまいそうな時、ピルで生理周期を調整して、生理日を移動することが可能です。薬で生理日を移動しても、次の生理は普段通りに来るので、特に心配ありません。
生理を早める場合
生理開始後、5日目までに内服を開始し、10〜14日間続けた後服用をストップすると、3~4日後に生理のような出血が始まる仕組みです。1か月程度の余裕が必要ですが、イベント時にピルを服用しなくて済むのがメリットです。開始日や服用日数は生理を早めたい日に合わせて調整します。
生理を遅らせる場合
生理開始予定日5日前からピルの服用を来て欲しくない前日まで継続服用する事で遅らせる事が可能です。又普段からOCを服用している方に限り、生理を遅らせたい日まで継続して内服することで出血が起こるタイミングを遅らすことが可能です。ただイベント時も服用が必要なため、吐き気や頭痛などの副作用が出ることがあります。
※短期間で調整したい場合は中用量ピルを使用します。
低用量ピル(OC)の種類と費用
OCは、製品によって含まれる成分や配合方法に違いがあります。現在、OCに使用されている卵胞ホルモン(エストロゲン)は、「エチニルエストラジオール(EE)」の1種類しかありませんが、黄体ホルモン(プロゲスチン)には4つの種類があり、開発された順に1~4世代に分けられます。
また、「1相性ピル」と「3相性ピル」というホルモンの配合方法による分類もあります。1相性ピルは、周期を通してホルモンの配合量が一定のため、飲み間違いの心配がないのがメリットです。それに対して3相性ピルは、女性周期に合わせて配合量を3段階に増減させて、使用するホルモンの総量を減らすことができ、不正出血が起きにくいのがメリットです。
薬によってそれぞれ特徴があるため、使用する目的や薬との相性(副作用の有無など)を考慮してご自身の体に合う薬を見つけることが大切です。
※OCの処方は自費診療のため、全額自己負担となります。初診時にはピルシートの費用以外に相談料(血圧測定、問診、内服指導料含む)の3,200円(税込)が別途かかります。
世代 | 特徴 | 製品名 | 費用(税込) |
---|---|---|---|
第一世代 | 女性周期に合わせ配合量が3段階に変わる3相性ピル。 出血量が減りやすく、月経困難症のコントロールに優れている。 | シンフェーズT28 | 2,500円 |
第二世代 | 女性周期に合わせ配合量が3段階に変わる3相性ピル 不正出血が少なく、安定した周期を作りやすい | トリキュラー28 | 2,600円 |
ラベルフィーユ21/28 | 2,300円 | ||
第三世代 | 配合量が一定の1相性ピルで、ホルモンが一定のためPMSにも効果的 男性ホルモン(アンドロゲン)作用の抑制効果が高く大人ニキビ、多毛症の改善に優れている | マーベロン28 | 2,600円 |
ファボワール21/28 | 2,300円 |
※価格はすべて税込みです。
OCのマイナートラブル(慣れるまでに感じる症状)について
マイナートラブルは、通常1~2ヶ月でおさまってくることがおおいです。OCをのみ始めたらマイナートラブルと呼ばれる症状が出ることもあります。
- 頭痛
- 下腹部痛
- だるさ
- 不正出血
- 軽い吐き気
- 乳房の張り
これらはOC(低用量経口避妊薬)によって体内のホルモンバランスが変わるため、体が慣れるまでに感じる症状です。多くの方は1~2ヶ月のみ続けているうちにおさまっていきます。
※こうした症状が長く続く、だんだんひどくなっていくなど、気になることがあればピルの変更を検討したり、他に病気がないか診察をする必要があるため、ご相談ください。
低用量ピル(OC)のよくある質問
Q
ピルを飲んでいて、将来、妊娠しにくくなりませんか?
Q
ピルを飲んでいて、将来、妊娠しにくくなりませんか?
A
なりません。
OCの服用で卵巣の機能が低下することはありません。低用量ピルの服用を中止すると、多くは通常1~3か月以内に排卵が起こり、妊娠が可能になります。もちろん、中断後すぐ妊娠しても赤ちゃんへの影響もありませんのでご安心ください。むしろピルを飲むことにより、計画的に妊娠・出産を進めることができるので、望まない時はしっかり避妊し、妊娠を希望した時に望めるということが、低用量ピル(OC)の大きなメリットでもあります。
Q
ピルの長期服用による体への影響はありませんか?
Q
ピルの長期服用による体への影響はありませんか?
A
影響はありません。
ピルは、長期服用することを前提に作られた薬であるため、問題はありません。ただし、ピルの服用中は、体調を観察するため、6か月毎に定期検査を受けていただく必要があります。特別な異常がない場合は、そのまま服用を続けていただけます。
Q
ピルは何歳まで使用できますか?
Q
ピルは何歳まで使用できますか?
A
40歳以上の方はリスクがあがります。
世界保健機構(WHO)によると、初経後から閉経(もしくは50歳のどちらか早い年齢)まで服用可能とされています。ただし、初めて内服する、間隔を空けて再開する40歳以上の方は、血栓症のリスクが上がりやすくなるため、慎重に使用する必要があります。使用に際しては医師にご相談ください。
Q
生理不順でいつ生理が来るか分かりません。いつから服用を開始すれば良いですか?
Q
生理不順でいつ生理が来るか分かりません。いつから服用を開始すれば良いですか?
A
こちらから説明いたしますのでご安心ください。
生理周期がバラバラでいつ始まるか分からないような場合、患者様の状況に合わせて処方時に服用開始日をお伝えします。その指示に従って服用開始して下さい。
Q
授乳中にもピルを使用することは出来ますか?
Q
授乳中にもピルを使用することは出来ますか?
A
時期によって見極めが必要です。
ピルの内服は、ピルの成分が母乳に移行し、乳児に影響を及ぼす可能性もあります。しかし、授乳時期や状況により、内服可能となる場合もあります。WHOでは産後半年を経過していれば、可能とされています。
低用量ピルの服用をお考えの方へ
OC(低用量ピル)はいつでも始められ、そしていつでもやめられます。 あなたのライフスタイルにあわせて使うことができます。
- 正しく服用することで避妊率は、ほぼ100%
- 生理痛の緩和や生理不順の改善に効果的
- 将来の妊娠には問題がない